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裏設定メモ ( No.5 )
日時: 2016/09/09 19:54:16
名前: あまとう 

裏設定メモ

「エーリアンの過去」
本名はシグルズ・グリムライト。
グリムライト孤児院の院長に嵐の夜に拾われた赤ん坊で、正確な出自はわからない。
孤児院では素直で勇敢な少年としてすくすくと成長したが、自分のシグルズという名前があまり好きじゃない。
しかし尊敬する親代わりでもある院長に名づけてもらった名前でもあるため、嫌いというわけでもない。

同じ孤児に「ヒルダ」と言う名前の年の近い少女がおり、血のつながりはないものの
本当の兄妹以上にとても仲の良い兄妹として育っていった。

しかし幸福な時間は長く続かない、ある日街に疫病が蔓延した。
シグルズは身体が丈夫であったため、大事には至らなかったが
普段栄養が取れていない他の子どもたちや、身体の弱かったヒルダは床に臥せってしまう。
シグルズは院長や大人たちと、近くを訪れたという神官の一団に救助を依頼するが、断られてしまう。

街にはまだ多くの病人が居て、どこも同じような状況であること。
そして、孤児院はあまり多くのお金を支払うことが出来ないということ。

それ故に神官たちの優先度はとても低かったのだ。
だが、もう子どもたちはいつ命を落としてもおかしくない。悠長に待ってはいられない。
シグルズはもちろん怒って抗議するが、それが無駄だとわかるとある決意をした。
自分一人で、隣町の薬剤師からせめて孤児院の子どもたちの分だけでも薬をもらってこようと思ったのだ。

外には魔物もいる、それに疫病の影響で馬車も出ていない。
そんな状況で外に出るのは自殺行為だと大人たちは止めたがシグルズは静止を振りきって飛び出した。
全ては、愛する家族を救うため。ヒルダを助けるためという一心の行動だった。

シグルズは走る、野山を、道無き道を一直線に走る。
靴が壊れて、足の裏に石が突き刺さろうとお構いなしに無我夢中に走り続けた。
魔物の恐怖に怯えながらたどり着いた町ではすぐに薬剤師を見つけることが出来た。
シグルズの話を聞いた薬剤師はすぐに薬を用意してくれる。

だが辺りはもう暗い、今日は泊まって行きなさいとすすめる薬剤師だが
シグルズはこれを断り、礼を言ったうえで闇の中へと再び走りだした。
闇はとても恐ろしい、何がいるかもわからない。
だが、自分にはヒルダが待っている。自分がこんなところで怯えている場合ではない。
それだけがシグルズの心と走る足を支えていた。

そうして一晩かけて街まで舞い戻ったシグルズは
これで全てが上手くいく、みんなが助かる。そうなると確信した。
きっと皆が褒めてくれるだろう、自分は無謀ながら家族を救ったのだ。

自分の体の痛みなど吹き飛ぶかのようだ。
笑顔で孤児院の扉を開けると、中には数人の神官が来ていた。

今更やってきたのか、などと思いながらもとにかく薬をヒルダに届けたい。
ボロボロの体を引きずって、ヒルダの部屋のドアを開ける。
ヒルダはそこで眠っていた、でもおかしい周りの子どもや院長が涙を流している。
自分がいくらヒルダに声をかけても、ヒルダは起きてくれなかった。

理解が出来なかった。
でも、少し考えて理解したくなかっただけだと気がついた。
ヒルダは冷たくなっていた、もう、目覚めることはないんだ。

そうだと分かってしまったその瞬間、表現しきれないほどの感情が爆発しそうになる。
自分は何かを叫んで涙を流して、暴れようとしたけどもう身体は満足に動かなくなった。

だが分かることは、とても悔しかった。
自分が間に合わなかったことが、自分がヒルダを一人にしてしまったことが。
自分がちっぽけな功名心で、ヒルダのそばを離れなければせめて最後の言葉をかけられたかもしれない。
せめて、一緒にいれれば、ここにいるよと励ますことが出来たはずだった。

混濁する意識の中、シグルズはひたすらヒルダにうわ言のように謝っていた。

その出来事から数週間、シグルズは比較的普段の生活を取り戻していた。
子どもたちの大部分は命を取り留めた、自分の怪我もほとんど完治している。
けど、胸にポッカリと空いた穴をふさぐことは出来ない。
その虚しさを振り払うように、シグルズは木刀を振っている。
さらに独学の訓練の合間に、食事代を切り詰めて購入した医学書を毎日のように読みふけっていた。

強く、賢くなるために。
強ければ、今度は誰かを守れるかもしれない。
賢ければ、今度は誰かを救うことが出来るかもしれない。
誰かを救ったところで、ヒルダを救えたということになるわけじゃないのはわかってる。
それでも、もう弱いままでは居たくなかった。もう失いたくなかった。

そんな日々からさらに数年が立って、シグルズはすでに成人を迎えていた。
シグルズは港町の造船所で働いていたが、ある日そこである吟遊詩人と出会う。
彼はシグルズが聞いたことも見たこともないような世界を教えてくれた。
彼は言う「冒険者になれば、君もこんな世界を見ることが出来る」
シグルズは言う「冒険者か…一攫千金も夢じゃないって?」

シグルズは今までの貯金で装備を整え、残った分は全て孤児院に送った。
今まで暮らしたエレミアの街を離れオランへと向かったのだ。

オランへ向かう馬車の中、オランでは冒険者としてどう活動するか考える。
そうしてまず最初に考えたのが名前を変えること、そして新しい名前はすぐに浮ぶ。
異邦人という意味の言葉を名乗ることで、せめて自らの気持ちを引き締めるという心構えだ。

そうしてシグルズはその日から「エーリアン」と名乗るようになった。
彼の冒険は今も続いている。

【2016/09/09 20:01:51 投稿者修正】