オランの日常 ソードワールド日常掲示板
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記事No : 11653
タイトル ”外側”という安心感(3/2 オラン酒場兼宿屋)
投稿日: 2016/03/02(Wed) 07:46:57
投稿者マリー・エーマン
参照先http://bbs.swordworldweb.net/pc-list/read.cgi?no=577

 「…ああ、そうだった…。」
窓の外を見るなり誰に言うでもなく彼女はつぶやき、小さく頭を振った。もともと生気のない目からさらにやる気が失せ、この世のありとあらゆる絶望を飲み込んだような悲壮な顔をしながら、彼女は宿の階段を降りて行った。

ここはオランの酒場のひとつ。この街で酒場といえば、宿屋と兼業する、いわゆる”冒険者の拠り所”であることが多いが、ここも例にもれず二階に宿泊用の部屋が用意されている。彼女はある日をきっかけにここに寝泊まりしているのだ。余談ではあるが、大きな市場が宿の窓から見えることがウリのひとつ。もっとも、彼女にはお気に召さない様子だが。
「よう!お嬢ちゃん。ずいぶんお早いお目覚めだな?」
「…おはよう、おじさん。」
彼女に”おじさん”と呼ばれているのはこの酒場のマスター。彼女に何度言っても”マスター”と呼んでもらえないので諦めた。
ちなみに、時計は10時を指している。
「菓子祭だっていうのに、もったいねぇなぁ。お嬢ちゃんもキャラメル集めに行くのかい?」

菓子祭り…正式名称”聖カーラメル祭”は、とある地方の聖人を祝い豊穣を願う巡礼だったものが、馬車・山車などどんどん増えていきお祭りになっていったものらしい。祭りになるとパレードが街を練り歩き、集めると幸せになるというキャラメルを撒いていくのだ。
特に市場はその広さと人の集まりやすさから、大混雑になる。
「ハッピー・カーラメル!幸せな甘い春を!年中辛気臭い顔のお嬢ちゃんにぴったりじゃないか。」
「悪かったわね、辛気臭い顔で。…私には、窓から騒がしい様子を見てるだけで充分よ。」
心底くたびれた顔で言うと、窓際の席に座り市場の様子を眺める。

彼女はお祭り…特にこういったお祭りは大の苦手である。ついつい”いらぬ考え”をしてしまうのだ。
(…ほら、始まった。)
祭りでごった返す市場の一角で、子供たちの数人が喧嘩をはじめた。おそらくキャラメルの取り合いになったのだろう。こういう祭りではよくある光景だし、些細なことではあるのだが。
彼女の目にはかつて見た、飢えて一切れのパンを取り合うゴブリンに見えていた。

(…だから、”ここ”がいい。)
自分が外側にいれば、蚊帳の外にいれば、あの醜い争いに加わる必要もない。傷つくこともない。
そういった経験から彼女は人の集まりそうな場所を避けてきた。ましてや祭りのようなものは彼女にとって危険そのものだったのである。そして…誰にも関わらない外側で、一人安堵する。『ああ、今日も無事に過ごせました』と。
と、そんな考えに浸りながらその小さな争いを見守っていると。

『これ、あげる』

まるでそういうかのように、たくさんのキャラメルを抱えた少年が喧嘩をしている子供たちに割って入ったのだ。
子供たちはもちろんのこと、それを眺めていた彼女までぽかーんと口を開け、そのまま固まってしまった。

そのまま数分後。窓を向いたままぽつりと彼女はつぶやいた。
「…おじさん。キャラメルマキアート、ある?」
「ああ?なんだって?」
「…ううん、なんでも。」
こころなしか緩んだ表情で、”内側”を眺めていた。

――PL――
お初にお目にかかりますnononデス!
世界観に合わせた季節ものがいいなぁということで、お祭りネタを借りました。…が、怒られないかなぁこれ(汗)無断拝借だし…。問題あればメールください(笑)


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