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タイトルしわくちゃの手 (11/2 夕刻 メガーヌの酒場)
記事No11341
投稿日: 2014/11/02(Sun) 21:32:40
投稿者ミル・モフェット < >
参照先http://bbs.swordworldweb.net/pc-list/read.cgi?no=198

「ん、く」

強い酒をショットで飲み干す
喉が焼け、一瞬置いて、耳に熱が回る

「ふぃ……やっぱうまいなあ、ここの酒」

おんぼろの戸板からはすきま風がぴうぴう吹き込んでくるけど、こんなバカ強い酒置いてんは、オランでもここくらいしか知らへん

虫食いだらけのカウンターに置いたつまみは、しょぼいナッツだけ
都合良く猫にやる魚があったのは奇蹟みたいな、そういう場所
お気に入りの隠れ家や

「ん、なんや
 この手のこと?」

女将であるメガーヌとの雑談で、ウチの手について尋ねられる

ウチの手は、現在のところ、老婆のようにしわくちゃんなってる
先日、水の精霊の暴走で、あやうく全身干からびるとこやったんやけど、幸い直前にそれだけは避けられた

ただ、事前に対処法も聞いとったのに、うかつなウチは、不用心にも干からびた死体を目の前にしてたのに、危機感もなく得体の知れへん宝玉を直で触ってもうた

「ま、そんなこんなでなあ、あぶないとこやったわ
 ああ、ええねんええねん
 しばらく休んだら元に戻るやろ
 実際、海から帰ってきてから、ちょこっと水気は回復した気がするしな
 ええ薬んなったわ

 ん?
 いややなあ、メガーヌ、うかつは反省してるよ
 もうこんなヘマはせえへんて
 ほんまやて、あはは」

笑いながら、しわくちゃの手で、もう一杯

「ほんと、なぁ
 人間慣れっちゅうもんは恐ろしいもんやで
 長年この稼業やってんのに、ちょっとユルい敵をぶっちめたら気ぃゆるんでこのザマや」

そう、ウチはうかつな冒険者や
今まで生きて帰って来られたのは、駆けつけてくれた仲間に救われたり、たまたま相棒の腕と思案がよかっただけやったり

「へいへい、反省してるって
 ほら、自分も一杯やってぇな
 ちいとくらい苦い酒に付き合うのも女将の商売やろ?
 ははは、あはは」

からかわれながら、酌み交わす
生きて帰れたから、また呑める
せやからこれは、きっといいほうなんやろう

失敗しても、うまくいかなくても
しわくちゃの手が、それを教えてくれた

「あはは、あはは」

気に入りの酒を傾けながら、陽気に笑う

「さあ、もう一杯」

命あるかぎり、喉を焼く酒と、ぐうたらな睡眠、お気に入りの煙を楽しむ
そんで、また帰ってくることを決める
それが、ウチなりの渡りかた

「乾杯」

ちょん

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アローンな日記ですみませぬ

うかつさを反省!
でもいつかまたやっちゃうんだろうなあ、と

タイトル酔いも笑いも生きてこそ
記事No11351
投稿日: 2014/11/25(Tue) 22:07:02
投稿者オート・メララ
参照先http://bbs.swordworldweb.net/pc-list/read.cgi?no=446
>「乾杯」
>ちょん


「おっと、私も」


先輩が飲む酒からすれば水のようなエールだが、盃に貴賎はない。
ショットの乾杯にジョッキで割り込む無粋を働く事にする。


「しかしまぁヒドイ事になってますな、その手…くくく」


老婆のように萎びてしまった先輩の手を笑うのは、
しばらくすればソレは元に戻るだろうという見立てがあるため。
そして酒の席で皆が皆しんみりしていたら湿っぽくてイカンという、
私なりの信条のためである。


笑い話にしてしまったほうが、かえって記憶として整理しやすい事もあるのでは…
と、私は思うのだ。


「なにか先輩は雰囲気が違いますよなぁ…いや、ベテランの冒険者ってこう、
 独特の雰囲気を纏うようになるじゃあないですか。
 刃のような、といったらキザですかね…先輩はアレがあんまりないような気がします」


シティシーフと魔術師の二足のわらじを履くミル・モフェットを勝手に
先輩呼ばわりしている私だが、普段そんなに接点が有るわけではない。
一緒に仕事をしたのも今年に入ってやっとだったか。


だから単に、私が『ミル・モフェットの本気』を見た事が
ないだけなのかもしれないが…


「フフ、気をつけてくださいよ…
 アレの、コレが、危険な魔法の品でソレするなんて笑い話にもならない」


『アレ』で指す符丁は『盗賊』
『コレ』で指す符丁は『魔術師』
『ソレ』で指す符丁は…生きとし生けるもの全てが避けられぬ『ソレ』である。


知識と宝物の両面に通じるミル・モフェットの今回の事故は、
たとえば英雄が不意にゴブリンの短刀を避け損なうような、
そんな油断によるものなのかもしれない。
知るが故、戦う術を持つが故の危険というものがあると、私は思うのだ。


いつか自分にもそんな瞬間が来るのではないか。
果たしてその時私は、先輩のように生きて帰って、
酒の席の話題を一つ作るだけで済むのかどうか。


そんな漠然とした不安が、今夜の私の軽口を後押ししていた。


「ああいかん、冷えてきた…すみません、お湯割りを一つ」


寒さ忍び寄る11月の酒場で。
私はそんな寒気を忘れようと、もう一杯の酒を注文するのだった。


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-PLスキュラ-
アローン日記に邪魔者が一人|彡 サッ

【 投稿者修正】

タイトル仲間のためにできる、たった一つの冴えた生き方
記事No11355
投稿日: 2014/11/27(Thu) 18:14:33
投稿者ミル・モフェット < >
参照先http://bbs.swordworldweb.net/pc-list/read.cgi?no=198
 


>「おっと、私も」

気付くと、ウチの掲げたショットに、エールのジョッキがあわされた
この声は

酔いの回った目でぼんやり隣を見ると、同じ魔術師盗賊のオートが優しげな目をして座ってた

「あはは、オートか
 この店に来るなんて珍しいな」

あの猫事件から何ヶ月経ったかな
お互い譲れへんやったせめぎ合いを通して、ウチはこの男が大好きになってた

>「しかしまぁヒドイ事になってますな、その手…くくく」

ショットを持つ手を指し示しながら、苦笑する
ローブで身体を包んでるから、首からしただけ見りゃまんまばーさまやからなぁ

「ちょぃ、と、下手打ってなぁ、あはは」

回復してるから、笑い話にも出来る
自身の未熟さを後悔するよか、こうしてからかわれたほうが精神衛生上たいへんによろしい
それをわかってくれとるふうが、酔うた耳には心地ええ

お互い、前の冒険の話なんかしながら酒を酌み交わしてると、オートが少し首をかしげるように、こう言った

>「なにか先輩は雰囲気が違いますよなぁ…いや、ベテランの冒険者ってこう、
> 独特の雰囲気を纏うようになるじゃあないですか。
> 刃のような、といったらキザですかね…先輩はアレがあんまりないような気がします」

ふむ……雰囲気、ねぇ
確かに今までウチが会うたベテランには、そういう人たちもおった
刃とまではいかへんでも、みんなそれなりま貫禄ってぇか、存在感がある
ジュリアあたりも、優しい空気はそのままに、頼りになる大人ってイメージがあるしなぁ
ただ、ウチの場合は小娘の時分肩肘張ってたせいで、年々それが抜けてってるのがスタイルになってるのかな

「アレ、ねぇ
 どうにもウチにゃまだ早すぎる気がするな
 ま、二足のわらじの弱みかもしれへんな」

兼業をする冒険者は多いけど、組織ってとこで二つ掛け持ちってのは少ない
当然、戦歴に比してみれば、おっつかないとこがある

「でも、褒められたって取っておくよ
 なに、ウチの二つ名は『泣く子も笑う』ミル姐さん、やからな」

だれに言われたんだっけ
その当時のことも思い出せへんくらい、この街に根を下ろしてる

>「フフ、気をつけてくださいよ…
> アレの、コレが、危険な魔法の品でソレするなんて笑い話にもならない」

そんな符丁を混ぜて、オートが笑う
お互い同じ境遇にあるだけに、それは共通した注意事項

「はは、オートもな
 ただでさえ魔術師なんてのは知恵袋扱いされるのに、同時に盗賊って立場なんて、真っ先にヤバげなもん触らなきゃなんない
 オートなんか特に、身に換えても守りたい仲間がおるんやさかい、火傷の機会も多かろう」

あのつばめたちを守るためなら、オートは誰よりも先に危険を取り除きに動くやろう

「死んだらあかんで?
 身を犠牲にしたかて、あの子らは絶対嬉しゅうはないはずや
 オート自身がもっと身内に甘えたら、たぶんそのほうが楽しいって思われるやろ」

この男は、いろいろ背負い込みすぎるとこがある
十年前のウチのように

外から見てたら、エルやウードだって、オートに頼って貰いたいんやないかな、て思ってた

くい
ショットを空けて、また注ぐ
オートのジョッキと、また、ちょん、と

「ま、前線も張って後衛もやって、おまけに鑑定もする
 お互いにいっとう死にやすいポジションや
 けど、死んだらあかんねんな」

昔、オランで知り合った最初の親友に先立たれたあの悲しみを、ウチは今でも覚えてる
あの気持ちを、ウチは気心の知れた仲間達に味合わせたくない
それは、目の前におるこの生真面目な男に対しても同じ

「誰かを助けるのも、助けられて感じ入るのも、命あってのものだねやね
 泣かせたあかんで?」

くふふ、と笑いを漏らしながら
ウチは火酒でぐるぐる廻る視界の真ん中で『先輩』ぶってみせた

「また一緒にやるときゃ、ウチもみんなをもっと頼ることにすっからさ」

けらけら笑って、ウチはつばめのおでこを、つん、とつついた
そう、しわくちゃの指で

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わーい!
アローン日記絡んでいただきありがとうございます^^

オートはミルにとっては、昔の肩に力が入ってた自分を重ねるとこがあったりします